第32章 不協和音
澤村先輩達に頼まれたの?···そう聞こうとした所に、繋心が誰かを連れて歩いて来た。
···っていうより!
誰かっていうより!
あの遠目で見てもすぐ分かる見た目!
『慧太にぃまで何してるの?!仕事は?!』
慧「お前···オレに向けての第一声が、それかよ?」
繋「しっかしなぁ···桜太と慧太が指導者代理とか、一体どういう風の吹き回しだ?」
腕を組みながら繋心が言えば、桜太にぃ達は自分達からすれば繋心の方こそだ、と笑っていた。
私からしたら、どっちとも···だけどね。
道「城戸さん、もしかしてこの人も···お兄さん?」
状況がいまいち掴めないんだけど···と付け加えながら、道宮先輩が首を傾げる。
『家系図的には···兄ですね』
慧「紡···お前なぁ···」
はぁ···とため息を吐きながら言えば、慧太にぃは片眉をピクリとさせながら私を見下ろした。
『正確に言えば、双子なんです···一卵性の』
道「一卵性の、双子···えぇっ?!このいかにも誠実そうで優しそうな素敵なお兄さんと、見た目からしてチャラそうな人が?!」
菅「道宮、声デカイって!」
菅原先輩に窘められて、あっ!···と口を押さえる道宮先輩を繋心がゲラゲラと笑う。
繋「誠実そうで優しそうな?!桜太が?!」
桜「烏養?何が言いたいのかな?」
繋「イエ、ナンデモアリマセン···」
あぁ···なんか、頭痛くなって来た。
慧「紡、そういう事だから。ってコトで、そっちにいるJKのみなさんもヨロシクな!」
「「 ハイッ! よろしくお願いします! 」」
ん~、いい返事!と笑う慧太にぃに一瞥をしながらコートに目を向ける。
なんでこんな事に?
家に帰ったらコーチの真似事なんて!と、とりあえず慧太にぃには抗議しようかと思ったけど。
一時的とはいえ指導者が出来た事に喜んでいる道宮先輩たちを見ると、それも言えないかな···と思った。
桜「烏養。ひとつ提案がある···いい?」
繋「なんだ?」
桜「この子達の状況がまだ分からないから、あくまでも予定としてだけでいいんだけど、本番前日の放課後にそっちのメンバーと1セットだけプレーさせてくれないか?」
えっ?!
繋「マジか?!オレはいいけど、でもケガでもされたらそれこそ···」
『そうだよ桜太にぃ!翌日に交流会あるのに!』