第31章 ステップアップへのチャンス
~ 研磨side ~
「「 友よぉぉぉぉぉ~!!!!! 」」
帰り支度を終えて外に出ると、トラが烏野の人と叫び出した。
···うるさい。
「なに、あれ」
黒「あんま見んなって」
トラもうるさいけど、向こうの人も···同じような感じで、ずっと叫んでる。
黒「あ···」
ザッ···と足音がして振り返れば、クロの前に烏野の主将が立ち止まり、クロに手を差し出して来た。
澤「次 “ は ” 負けません!」
黒「次 “ も ” 負けません!!」
なんなの···二人とも貼り付けたような作り笑顔が···怖いんだけど。
夜·菅「「怖い!怖いからっ!」」
ほら、周りだって怖いって思ってる。
なんかよく分からないけど、音駒のコーチと烏野のコーチも···
夜·菅「「こっちも!大人気ねぇ!!」」
···そこは、まぁ確かに。
ああいう大人には···なっちゃいけない気がする。
日「研磨!」
翔陽?
おかしな二人組にため息を吐いてると、翔陽が駆け寄ってきた。
日「あのさ、前にあった時はバレーはキライじゃないって言ってたけど、今はどう?好きになった?」
前に···あぁ、あの時か。
「別に、普通」
日「普通かぁ···」
「だけど···」
今日、翔陽たちと試合してみて···
「···楽しい、と、思った」
普段は、あんまりない事だと···思うけど。
翔陽と戦って、紡がいて、クロも、やっくんも楽しそうにしてて。
そしたら、おれも···楽しかった。
『研磨さーん!···あ、いたいた!』
なんだか今日は、やたら誰かに呼ばれる日だな···
『はいコレ、研磨さんの分です。実は昨日の夜、清水先輩と武田先生でお土産のクッキーも作ったんです』
日「えーっ!いいなぁ、研磨たち」
『大丈夫。何人来るか分からなかったから、たくさん焼いたの。だから、日向君達も食べられるよ』
カサリ···と、小さな袋からクッキーをひとつ摘んだ紡が、その手を翔陽へと差し出した。
日「食べてもいいの?」
『いいよ、特別に味見って感じで』
日「やった!!」
翔陽は、純粋に喜んだだけなんだと思う。
けど、なんかちょっと···それがイラッとして。
『え?!け、研磨さん?!』
おれは紡の手を掴んで、そのクッキーを自分の口に入れた。