第31章 ステップアップへのチャンス

～ 月島side ～

はぁ···疲れた。

間に食事休憩入れたって言っても、こんな連チャン試合じゃ普通に疲れるデショ。

なのに王様も日向も体力有り余りで、あんなに動き回ってて···バカなんじゃないの？

あ、バカなのは知ってるケド。

汗で滑る眼鏡を直し、向こうのサーバーにチラリと目を向ける。

···次のサーブはあの主将か。

黒｢おーい、お嬢ちゃん！かっこよくサーブ決めちゃうから、ちゃんと見てなよ？｣

···は？

何なの、あの人···いくら練習試合だからって、敵チームのポチに愛想振り撒き過ぎデショ？

『はーい、クロさん頑張ってくださーい！』

はぁっ？！

ポチの声にピクリとこめかみが疼いた。

『···って、言うと思いますか？！クロさんがカッコよくサーブ打っても、烏野には守護神がいるんです！
落としません！！』

守護神···ねぇ。

西｢おぅ紡！絶対落とさねぇぜ！｣

『西谷先輩、ファイ！！』

ふ～ん···？

ま、確かに西谷さんのレシーブの凄さは僕だって分かってるけど。

ちゃんと僕だって、コートのなかで仕事してるっていうのに。

ポチには···後でお仕置きが必要、かな？

それに、僕はちゃんと知ってる。

最初の試合始まってからずっと、何かと音駒のオオカミ達が、子犬のポチにちょっかい出してるコト。

特に···あの主将と。

それから、大人しそうな···このセッター。

何気にポチを名前で呼んだりして、ホント何なの？

澤｢西谷！｣

西｢任せろ！！｣

打ち込まれてくるサーブを、当たり前のように西谷さんがレシーブする。

『西谷先輩ナイスレシーブ！』

···でしょうね。

それが西谷さんのコート内での仕事、なんだからさ。

でもそのボールはまた日向のスパイクを読まれて向こうのチャンスボールに変わった。

ワンチしたボールをリベロが拾って、セッターに繋がれた···

そう言えばポチは、あのリベロの事を何度も見てた。

ウチのエーススパイカーのスパイクを何度も拾うのは凄いコトなんだと思うけど。

だけど、それだけじゃないから。

···ちゃんと見てなよ、ポチ。

ここからは僕の···仕事なんだから、さ。

このセッターにツーアタックなんて打たせない。

もう、騙されない。

そんな圧力をかけるように、僕はネット際に詰めた。