第31章 ステップアップへのチャンス
~ 夜久side ~
黒「あ~、ちょっと待った!」
烏野の主将に向けて、クロが叫ぶ。
多分···オレと同じ事を考えてるんだろう。
澤「えっと?」
黒「いいから、ちょっとタンマ。で、お嬢ちゃんは膝見せろ」
『膝、ですか?』
ほら、やっぱり。
クロはそう言うとこ、抜け目ないからなぁ。
さっきのサーブに滑り込んだ時、素肌が床に擦った音がした。
それに城戸さんは、どういう訳かサポーターはなし。
···と、なれば。
黒「な?やっぱり。サポーターなしで飛び込んて来るとか、どんだけお転婆さんなんだ?」
『あ、ホントですね。ひと皮剥けてちゃってます···ピリッとするなぁとは思ってたんですけど』
黒「ひと皮剥けて、とか。お嬢ちゃん、ダ・イ・タ・ン」
···クロ、アホだろ。
『え?何がですか?』
そしてコッチは鈍感で助かった!
澤「すみませんけど、“ ウチの ”紡にそう言うセクハラ紛いなの、やめて貰えますかね?」
ウチのって、お父さんかよ!
黒「“ ウチの ”とか、独占欲強いねぇ」
クロ、やめろっての!
変な挑発すんなよ!!
「し、芝山!とりあえず救急箱持って来い!」
よく分からない2人のやり取りを切って、芝山に救急箱を持って来させる。
「城戸さん、ちょっと染みるかもだけど消毒な?」
澤「いやいや、それくらいこっちで面倒見れますから、清水!ちょい頼む!」
···なんでこの人、オレにまで敵対心ゴウゴウ燃やしてんだろ。
オレ、別にクロみたいに下心丸出しにしてないぜ?
『あの、お2人共?こんなの大丈夫ですから、舐めときゃ治りますし』
澤・黒「「 舐めても治りません! 」」
『は、はい···』
こんな時だけ息ピッタリ?!
芝「あ、城戸さん血が滲んで来ました。とりあえず消毒しちゃいましょう」
『ありがとう芝山君』
天然君の芝山が、クロ達の間をすり抜けて城戸さんの膝に消毒液を吹き付けガーゼを当てる。
ハハッ、芝山に先越されたなクロ。
芝「はい、これでおしまいです。大きい絆創膏したので変な感じかもですけど、バイ菌付くよりいいですから」
『音駒さんって、いろいろ揃ってるんですね!』
いや、その絆創膏デカ過ぎだろ。
城戸さんの膝が飲み込まれてんじゃねぇか。
微妙な顔をするヤツらに紛れて、オレも小さく肩を揺らした。