第31章 ステップアップへのチャンス
~ 影山side ~
城戸···アイツはまた!
最初の試合が終わって軽く休憩中に、とんでもない事を城戸が言ってザワつく。
確かに中学の時は同じ笛をチャチャッと拭くなり濯ぐなりして女子部は使い回してたけど。
ここでそれやったらダメだろ!
女子マネ同士ならまだしも、木下さんだろ?!
ありえねぇ。
『···影山?無言で立たれると怖いんだけど』
悶々と苛立ちながら城戸の後ろに立てば、何も考えてない顔で俺を見る。
『えっと、なに···かな?』
「お前はいちいち隙がありすぎんだよ、このボゲェ!」
つい、いつもの感じで頭を掴む。
『え?!なんで急に怒られてるの私···って、痛たたっ!なんで頭?!』
「···いいからサッサと行ってこい!」
そのまま体育館から連れ出そうとしたら、予期せぬ方向から腕が伸びて来て。
誰だよ、また澤村さんか?と視線を移す。
研「ねぇ···離せば?」
なんで音駒のセッター?!
「は?別に嫌がらせじゃねぇし···コム···コミィ···」
やべぇ、なんか動揺して言葉が···
研「どうでもいいけど···紡、痛いって」
「チッ···」
軽く舌打ちして見せながら、掴んでた手を離す。
研「···紡、平気?」
『え?!あ、はい···いつもの事なので大丈夫です』
そうだ。
俺は普段から城戸の頭は掴み慣れてんだ!
···日向もだけどな。
なんか···気に入らねぇ。
なんで初対面同然で城戸と仲良くしてんだよ。
黒「人見知り研磨があんな風に誰かに構うのは、超絶珍しいんだぜ?」
音駒の主将にニヤニヤしながら言われ、余計に腹立つ。
黒「···気になる?あのお嬢ちゃんが、研磨と仲良くしてること」
「別に···俺には城戸が誰と仲良くしようと関係ないっス」
黒「ふぅ~ん?じゃ、オレの勘違いってことかな?」
···うるせぇよ。
誰がどんだけ仲良くしようが、アイツの中には···まだ···
オレらが到底敵わないような人が住み着いてんだ。
とんでもなく、存在感のある人が。
だから···オレには関係、ねぇ。
頭ん中をチラつく姿を振り払うように、大きく息を吐く。
関係ないと言いながらも、負けたくはないと思う自分に···グッと拳を握った。