第30章 ネコとカラスの対決と···
~影山side~
城戸が副審の位置につくのを見ながら、ひとつ息を吐いて気持ちを整える。
ベンチよりも近いところに、城戸がいる。
それだけで、なんかホッとするのは···なんだ?
澤「今日は緊張してないな?」
日「はい!」
日向が落ち着いてんのは、試合形式に慣れてきたってところか。
犬「おおっ!ちっこい···」
日「なっ···なめんなよっ?!」
犬「なめてねーよ、全然!」
···。
日「ほ、ホントに?!」
犬「おう!」
いきなりネット越しに日向に声をかけるヤツに、イラッとする。
チッ···ちょっとぐらい油断しろよ、コノヤロウ。
研「翔陽···おれ、うちのチーム強いと思うって言ったけど、強いのはおれじゃなくて···みんなだから」
音駒のヤツ、次から次へと日向に声掛けやがって。
アイツ確か···日向がセッターって言ってたよな?
セッター···負けねぇ!
ー ピッ! ー
黒「研磨、ナイッサー!」
音駒からのサーブ、アイツかよ。
その手から放たれたボールが、大きく流れてこっちに向かってくる。
西「旭さん!」
旭「オーライ!···あ、すまん、ちょい短い···」
西「旭さん1ヶ月もサボるから!」
旭「す、すいませーん!」
東峰さんがレシーブしたボールは、予想より短い距離で飛んでくる。
澤「影山!カバー!」
「はいっ!」
ボールの落下地点を見極めて移動しながら、視界の端に日向が動き出してるのをチェックする。
日向が踏み切った!
···ここだ!!
日向へ向けて、高く早くトスを送る。
俺の手から離れたボールが、日向の手のひらドンピシャに届き···
日向が思い切りスパイクを打った。
それは俺達には見慣れたいつもの光景で。
でも、音駒には···ほんの一瞬の出来事で。
空気を切り裂くかのように、日向が打ったボールは音駒のコートへと沈んで行った。
ー ピッ! ー
静まり返るコートに、主審のホイッスルだけが響く。
···よし!!
まずは先制点だ。