第29章 ネコと呼ばれる人達

菅｢アレ？でもさっきは背が高くなりたーい！とか言ってなかった？｣

『スガさん！』

慧｢ほぅ？背が高くなりたい、ねぇ？｣

菅原先輩の言葉を聞いて、途端にニヤニヤし始める慧太にぃが自分のお皿からニンジンをひとつ、私のお皿に入れた。

『ちょ、なんて事を？！』

慧｢オレはこれ以上背が伸びなくてもオッケーだから、お前にそのチャンスを分けてやろう。あ～、オレって優しい！｣

そんなチャンスいらないからっ！

そして優しくもないから！

菅｢紡ちゃん頑張れ···応援するよ｣

『スガさん···応援してくれるなら、代わりにニンジン食べ、』

桜｢紡？｣

『はい···頑張ります···』

桜｢うん、お利口さん｣

怖い、怖いよ桜太にぃのその微笑み···

あぁ、神様···

ここには今、天使の顔した悪魔と、爽やかに笑顔を振りまく青年と···ただの、鬼がいます。

私はそんな３人に見守られながら、時間は凄くかかったけど、大きな敵をやっつける事が出来た。


菅｢そんなにグッタリするほど、苦手？｣

『まぁ』

桜太にぃがデザートを用意してくれてる間、テーブルに突っ伏して脱力してる私を見て菅原先輩が笑う。

···笑い事じゃないですって。

慧｢何だ、まだお前グロッキーなのか？｣

『慧太にぃのせいでノルマが１個増えたんだからね！これで背が伸びなかったら呪うから！』

菅｢呪うって、紡ちゃん···｣

思い出すだけでも口の中に味が甦って複雑な気持になる。

慧｢あっそ？じゃ、コレはいらねぇな？ん？｣

私の目の前に、フォークで刺したイチゴがチラチラと揺らされる。

桜｢昨夜から仕込んで置いたんだよ。なんだか急に作りたくなってね、イチゴババロア｣

エプロンを外しながら桜太にぃがキッチンから声をかけてくる。

菅｢ババロア···プリンじゃなくババロア···凄い！桜太さんって、何でも出来るんですね···｣

桜｢菅原君、そこまで感動しなくても｣

菅｢そんな事ないです！料理男子を極めたらモテ期到来して、何でも手に入るとか？！｣

可愛らしく盛り付けられたイチゴババロアを見て、菅原先輩か興奮気味に前のめりになる。

桜｢···ひとつだけ、どうしても手に入らなかったものが···あるよ｣

菅｢え？｣

慧｢桜太～、紡がイチゴ少ないって怒ってんぞ？｣

『そんな事言ってない！』