第29章 ネコと呼ばれる人達
慧「へぇ~、やっとコーチが付いたのか」
菅「はい、顧問の先生が凄く頑張ってくれて。それで、今日はその新しく来たコーチの関係者が練習試合の相手をしてくれたんです」
今日あった出来事を話しながら、みんなで夕飯を食べる。
中でも会話の中心になるのはやっぱり、バレーの事で。
桜「あの時、保健室にいた彼がエースだったとはね。なんかおとなしそうな感じだったけど、」
慧「お前がよく言う···」
桜「慧太、何が言いたい?」
慧「い~や、別に?」
私には慧太にぃが言いたい事が···凄い、わかる。
···気がする。
でもここは、敢えて何も言わずに黙ってご飯食べてよう。
それに私はいま、目の前にドーンと存在感を表しているニンジンと戦わなければならないから。
きれいに形作られたシャトー剥きの···ニンジン。
生のままなら食べられるんだけど、加熱されたニンジンは···何だかプラスチックのカップで温かいお茶とか飲んだ時みたいな匂いがして···ムリ。
桜太にぃが作ってくれるご飯はロールキャベツもパスタもサラダも美味しいんだけど、これだけはどうしても···ムリ。
暫くそれと睨めっこをしていると、食事の手を止めた私に気がついた菅原先輩と目が合ってしまった。
菅「紡ちゃん、どうかしたの?」
『え?あ、アハハハハ···どうもしない、です、けど···』
菅「そう?でも、急に食べるの辞めちゃってるから」
菅原先輩、それ以上は突っ込まないで欲しいッス。
···あれ、何か動揺し過ぎて田中先輩みたいになっちゃった。
慧「ははぁ~ん?お前、またかよ?」
ほら、そういう事言ったら慧太にぃの意地悪スイッチがね!
桜「紡?いつも言ってるけど、ちゃんと好き嫌いなく食べないと?」
き、来た···
穏やかに微笑みながら優しく声をかける桜太にぃ。
でもね、菅原先輩よく見て···桜太にぃの目は、笑ってないから。
そこに是非、気がついて下さい。
菅「紡ちゃん、ニンジン食べられないとか?」
だから!
···もうやめて。
慧「お前さぁ。そうやって好き嫌いとかすっから、いつまで経ってもチビッ子のまんまなんじゃねぇの?」
『グッ···う、うるさいよ慧太にぃ···いいの!ニンジン食べないと背が伸びないんだったら、今のまま小さくてもいいの!』