第28章 オトリの凄さ
菅「いえ、オレは別に···ただ送り届けただけですから」
更に恐縮する菅原先輩に、それでもだよ?と桜太にぃが微笑んだ。
慧「それでだな、そこで会ったのも偶然とは言い切れないから、夕飯食べてけよってかっさらって来たわけよ?」
『攫うとか···』
桜「たくさん作り過ぎちゃってその方が助かるから、是非どうぞ、菅原君?」
菅「···それじゃあ、あの、お邪魔します」
慧「あ、そうだ桜太。菅原の親御さんにはオレがさっき直接話をしてあるから、頃合い見て送ってくわ」
···根回し早っ!!
桜「わかった。帰る時に俺からも連絡するよ。高校3年生とはいっても、まだ未成年だからね」
菅「すみません···」
『スガさんは気にしなくていいんですよ?慧太にぃの思い付きに巻き込まれてるだけなんですから』
ほんっとに、慧太にぃの行動力には毎回驚かせれてるし。
慧「じゃ、そういう事で···菅原?用意が出来るまで、ゲームしようぜ、ゲーム!」
ニヤリと笑いながら慧太にぃが菅原先輩の肩に手を回す。
桜「慧太、手伝うとかは思わないわけ?」
そうそう!桜太にぃ、もっと言って!
コクコクと頷きながら、慧太にぃの答えを待つ。
慧「紡がいるだろ、紡が」
やっぱりそうなるのか。
はいはい、私が頑張りますよ···お手伝い当番は慧太にぃなのに。
待っていた答えは、だいたい予想がついていたから特に驚くこともなく、ため息だけが漏れた。
先に着替えておいで?という桜太にぃの言葉に甘えて、私は部屋へと上がり支度を済ませた。
桜「紡、あとはパスタソースを仕上げるだけだから、お皿とか頼める?」
わかった、と返事をして踏み台を持って食器棚へ向かう。
慧「がぁぁ!また負けた!」
菅「すみません···意外とオレ、このゲームやり込んでるんです」
悔しがりながらも楽しそうな慧太にぃと、申し訳なさそうにしながらもニコニコと笑う菅原先輩を見て、私も小さく笑ってしまう。
あのゲーム、私は全然勝てないから···慧太にぃはコテンパンにされちゃえ!なんてニマニマしながらお皿を並べていく。
桜「まったく慧太は、大人になっても子供みたいにはしゃぐから···」
盛り付けをしながら様子を覗く桜太にぃも、二人の楽しそうな姿に穏やかに笑っていた。
双子なのに全然違う···そう思って、私はまた笑った。