第2章 天才シンガー
「…ズルいよ、岩ちゃん…。」
「あ?」
「あの時俺が一緒にいたら、俺が今頃月菜ちゃんとラブラブになってたかもしれないのに!」
やけに大人しいと思ったら、月菜の話が終わるや否や、俺にしがみつき、早口でそう言った及川、五月蝿かったのとうざかったのが重なってムカついたから取り敢えず殴った。
「月菜ちゃん!今からでも遅くないよ!こんな暴力ゴリラより俺の方がカッコいいよ!」
「誰がゴリ──」
「トオルも世間一般的にはカッコいいって言われるのかもしれないけど、トオルみたいな人、私の周りに沢山いるもん。」
そりゃあそうだ。月菜は芸能人。及川みたいな見てくれだけがいい奴なんか見飽きてるだろう。だがその素直な言葉は俺らのツボに入った。今にも消えてしまいそうな及川の反応も合わせ三人で声をあげて笑った。
「月菜ちゃん最高!」
「いやあ、笑った笑った。」
「皆酷いよ!及川さん泣いちゃうからね!」
「ごめんねトオル?」
「月菜ちゃんそれ追い討ちだからね!」
休み時間ギリギリまで教室にいた及川達。結局及川は最後までいつも通り五月蝿かった。
「ハジメの友達面白いね。私とも仲良くしてくれるかな?」
「うるせえ奴等だけど悪い奴じゃねえからな。」
三人共Lunaのファンなんだ、仲良くしたいと思ってるのはアイツらだって同じだろう。つーか、アイツら…特に及川は仲良くなりたいと思ってるだろうよ。