第2章 天才シンガー
「ホントだ、本物のLunaだ。てか、え?なんで岩ちゃんにベッタリなの?」
休み時間、噂を聞きつけてやって来た及川、花巻、松川。及川達だけでなく、さっきから休み時間の度に月菜見たさに他のクラスからひっきりなしに人が訪れる。
「ハジメの友達?」
「俺は岩ちゃんの親友の及川徹。」
「誰が親友だ。」
「親友でしょ!?」
「俺は岩泉の親友の花巻貴大。」
「同じく親友の松川一静。」
「いつからお前らは俺の親友になったんだ。」
及川は兎も角、花巻、松川に親友だと言われたのは初めてだった。俺をダシに月菜と仲良くしようというのが見え見えだ。
「で、Luna…ちゃんはなんでそんなに岩ちゃんに懐いてるのかな?」
「月菜でいいよ。ハジメの友達とは私も仲良くしたい。よろしくね、トオル、タカヒロ、イッセイ。」
そして月菜は先程クラスの連中に話してたのと同じ話を始めた。俺とどうやって出会ったかとか、手を繋いでデートしたとか、俺の言葉に運命を感じただとか。それに花巻と松川は岩泉やるなあ、と声を漏らした。一番五月蝿いと思っていた及川はただ黙って月菜の話を聞いていた。それが逆にまた気持ち悪かった。あの生放送を見るまでLunaについて何も知らなかった俺。そんな俺に岩ちゃん信じらんないと声を荒らげた及川。なんでも、今一番お気に入りの歌手っていうのがLunaだったらしく、ホテルで延々とLunaについての話を聞かされていた。親も有名なシンガーだったとか、父親は日本人だとか、発売されたCDはシングル、アルバムを含め全部初回限定盤を購入してるとか。及川がアイドルだか歌手だか何かに夢中になってるのは知ってたが、それに興味が無かった。それにそれがLunaだったと知ってたとしても、月菜と知り合ってなければやはり興味を持たなかっただろう。