第1章 運命を変える出逢い
「ハジメ、見てる!?」
そう言って月菜はカメラに手を振った。…おい、何やってんだよ。恐らく月菜が言っているハジメというのは、俺の事だ。その番組を見てるかも分からない俺に向かって月菜は叫んだ。
「Hajime,I love you!I'll definitely go see you, just wait for me!(ハジメ、愛してるよ!私、絶対会いに行くから待っててね!)」
手に持っていたペットボトルは音を立てて落下した。蓋の閉まっていなかったペットボトルは俺の足元に水溜りを作った。それに及川が岩ちゃん何やってんの!?と声を荒らげるが、その及川の言葉は上手く俺の脳に伝わらなかった。全国放送、しかも生放送。何やってんだよ、コイツは…。
「ちょっと岩ちゃん!水!溢れてるから!もう、Lunaがハジメなんて言うから、岩ちゃんがときめいちゃったじゃん。でも大丈夫だよ岩ちゃん。ハジメって言っても岩ちゃんの事じゃないから。嗚呼…どうせならトオルって呼んで欲しかったなー。」
その生放送が終わってから、新聞やニュースでもその件は話題となった。ハジメとは一体何者なのか。色んな憶測が飛び交っていた。そしてその生放送から数日経ち、夏休みも終わり始まった二学期。
「初めまして、今日からお世話になります月菜・フローレス・常磐です。よろしくね。」
交換留学生としてやって来た月菜の姿を見て、クラスから歓喜の声が上がった。…嘘だろ。
「ハジメ!会いたかった!」
俺の姿を見るなり、飛び付いてきた月菜に強引にキスをされた。今度は頬じゃない。口にだ。
「…っ!ちょ、何すんだよ!」
「言ったでしょ?絶対会いに行くから待っててねって。」