第4章 同じ土俵
翌日、月菜は学校に来なかった。今までも仕事で遅れて登校してくる事があったから別にそれが珍しい事では無かったから、たいして気にも止めなかった。
「急な話だが、常磐の帰国が早まって、今日日本を発つ事になった。本人から直に皆に挨拶を出来なくて申し訳無い、皆と過ごせて楽しかったと伝えて欲しいとの事だった。」
「…は!?」
その言葉に俺は思わず立ち上がった。んだよ、そんな事、一言も言わなかったじゃねえかよ…!
思い返せば、昨日の月菜はいつもと様子が違った。なんで気付かなかったんだよ…!馬鹿かよ俺は…!
「岩泉!戻りなさい!」
教室を駆け出した俺は、三組の教室へ向かった。扉を開けると、同じくHR中で、三組の担任に何事だと尋ねられたが、それに答えてる時間なんて無かった。
「花巻!チャリの鍵貸せ!」
「は?何だよ岩泉。」
「いいから貸せ。」
理由も言わずにそう言った俺に花巻はチャリの鍵を渡した。それを受け取り、再び俺は駐輪場へと走った。花巻のチャリに跨り、大急ぎで仙台空港へと向かった。昨日あの時間まで学校にいたって事は、昨日日本を発った訳じゃねえ。なら月菜はまだ日本にいる筈だ。自転車をこぎ乍、携帯を取り出し月菜に電話を掛ける。コールがちゃんと鳴る事からしてまだ飛行機には乗っていないとみた。携帯を再びポケットにしまい、無我夢中で自転車をこいだ。まだ月菜に何も伝えなくていい。そう思っていた。なら、このままお別れでも構わねえ筈だ。けど、そんな考えと正反対に体は動いた。