第4章 同じ土俵
「あれ…?おかしいな…なんで、」
月菜は慌てて涙を拭ったが、次から次へと涙は零れ落ちた。
「離れてても、私達、友達…だよね?」
「…当たり前だろうがボケ。」
「アメリカに帰っても連絡していい?」
「…嗚呼。」
「沢山連絡するから、ちゃんと返信してよ?」
「気が向いたらな。」
「…ハジメの意地悪。」
今はこんなにも近くにいるのに、あと数日で月菜と会えなくなる。思い返せば、とんでもない出逢い方をして、最初から最後まで振り回されっぱなしだったな。まさか、あの出逢いが俺の今後の人生に大きな変化をもたらす事になるとは思いもしなかった。けど、結果、それで良かった。上京し、プロを目指したいと口にする事が出来なかったし、それを実現する為に努力するのも怖かった。けど、月菜との出逢いと及川の言葉で、決心がついた。
「つーか、月菜、お前帰らなくていいのかよ。」
「うん。今日は大丈夫。…だから、もう少しここに居ていい?」
「別に構わねえけど。」
「私、ハジメと一緒に居ると頑張ろうって気持ちになれるから好き。」
俺も月菜が好きだと、月菜に見合う男になるまで待っていて欲しいと伝えたら月菜は笑ってくれるだろうか。けど、プロになれる保証も無い俺がそれを今口にする事で、月菜を苦しめるかもしれねえ。なら、まだいい…このままで。