第4章 同じ土俵
「母ちゃん!俺、東京の大学に行きてえ!」
「は?何よ、いきなり。」
「俺、プロになりてえ。及川とのバレーも終わらせたくねえし、何より夢を諦めたくねえ。他にやりたい事も見つかった。こっちの大学じゃ駄目なんだ。頼む!東京に行かせてくれ!」
母ちゃんは深い溜息を漏らした。
「別にお母さんは、一が上京するの反対じゃないし。そもそもアンタは徹くんと一緒に東京の大学に行くとんだと思ってたから、こっちで進学するって言った時の方が驚いたわよ。」
「それじゃあ…!」
「ちゃんとお父さんにも自分から話しなさいよ?」
「嗚呼。」
急な進路変更なんて反対されるもんだとばかり思っていたが、母ちゃんは突然のそれをアッサリと了承した。
そして、夜、父ちゃんが仕事から帰って来て、父ちゃんに話をした時も、アッサリと了承してくれた。
「一が向こうで頑張りたいって言うなら、父ちゃんも反対なんかしねえよ。寧ろ大賛成だ。けど、何で急に心変わりしたんだ?少し前までは、バレー続けられるなら何処だって構わねえって言ってただろ?」
「…ここで終わりたくないって思ってただけだ。俺よりバレーが上手い奴なんていくらでもいるし、俺自身、今が自分の限界だと思ってた。けど、だからと言って、未練残したまま中途半端な気持ちでバレーを続けたくねえって思った。プロになるチャンスがここで進学するよりも東京の方がチャンスがある。それならそのチャンスをちゃんと掴みてえんだ。…まあ、そう思うキッカケをくれたのは及川…なんだけどよ。」
名前こそは出さなかったが、それは月菜の言葉もあってだった。
「頑張れよ、一。」
「おう。」