第4章 同じ土俵
部活を引退し、大学受験に向け、今まで疎かになっていたのを取り戻すように勉強に明け暮れた。月菜への気持ちに気付いたが、気付いたからといって俺と月菜の関係は何も変わらなかったし、変わらない事を望んだ。
「なんかさ、最近岩ちゃん、妙に月菜ちゃんに優しいよね。」
及川のその言葉に思わずドキリとした。前と変わらず接しているつもりだったし、ちゃんと気持ちを隠してるつもりでいただけに、及川のその発言に驚いた。
「別に普通だろ。」
「岩ちゃん、月菜ちゃんの事好きでしょ?」
「別に好きじゃねーよ!」
「俺は岩ちゃんと月菜ちゃんお似合いだと思うよ。」
「…お似合いだろうが何だろうが、そんなの関係ねえよ。俺と月菜じゃ住んでる世界が違い過ぎんだろうが。」
それを聞いて及川は腹立たしい笑みを浮かべた。その笑い方がいつも以上に癪に障ったから、取り敢えず殴った。それに痛いといつも通りの反応を示すが、その顔はその言葉とは反し、にやにやと俺の神経を逆撫でするような厭らしい笑いを浮かべていた。
「んだよ!気持ち悪いな!」
「いや、だって、嬉しくって。」
そう言って笑う及川にドン引きした。
「ちょっと岩ちゃん!勘違いしないでよ!?殴られたのがじゃないからね!?」
とうとう及川がそっちの世界への扉を開けちまったんじゃねえかと、気持ち悪い想像をしたのがバレたのか、及川は慌てて否定の言葉を並べた。