第3章 手を伸ばせば届く距離
「もしかして俺、邪魔しちゃった?」
少しだけバツの悪そうな顔をし、遠慮がちにそう言った及川。
「さっさと行くぞ。」
「待ってよ、岩ちゃーん!」
手を伸ばせば届く距離にいる。確かに、今、目の前に月菜はいる。だが、本来ならば、俺と月菜は出逢う事は無い位、住んでる世界が違う。俺はただの日本の高校生で、月菜はアメリカの人気シンガー。自分の気持ちに素直になって、手を伸ばせば届く距離に月菜がいるなんて、勘違いもいい所だ。俺が月菜に見合う男な訳が無い。月菜は二学期が終われば日本から居なくなる。どうせ、月菜の気持ちも今でこそは俺に向いていても、日本を離れれば、きっと離れていく。なら、無理して手を伸ばす必要なんか無い。