第3章 手を伸ばせば届く距離
「なんでいんだよ…?」
月菜はその問い掛けに答える事なく、俺の胸に飛び込んできた。
「ハジメ、カッコよかった…!凄く、カッコよかった!頑張ったね!ハジメ、頑張った…!」
「ちょ、離れろ…!」
月菜の体を引き剥がしたが、自分の事のように涙を流す月菜に何て声を掛けていいのか、また、どうしたらいいのか分からなかった。
「ハジメ、お疲れ様。大丈夫だから、皆分かってるからね。」
そう言って、突然歌い始めた月菜の優しい声色に、再び涙腺が緩んだ。
「…くそっ…、なんなんだよ、お前…。」
子供をあやす子守唄のような優しい歌声に不思議と涙が止まらなくて、俺は月菜に体を預けて泣いた。
初めて月菜の歌声を聴いた時から、酷くその声に夢中になった。月菜自身の事は置いておいて、好きだと感じた。けど、今は慈しむように、励ますように、ただ俺の為に歌う月菜の存在が愛しくて、恋しくて堪らないと思った。嗚呼…いつの間にか俺、月菜の事、好きになってたみたいだと、湧き上がってきた感情を素直に受け止める事が出来た。