第3章 手を伸ばせば届く距離
月日はあっという間に流れ、迎えた宮城県春高決定戦。やれることはやったし、全力を尽くした。それは俺だけではなく、他のメンバーもそうだった。
初日は、出羽一と伊達工。伊達工の高いブロックに何度もスパイクが叩き落とされたが、結果、勝利を収める事が出来た。明日は準決勝。インターハイぶりの再戦となる烏野。烏野に勝って、決勝戦に出て、白鳥沢をぶっ倒す。中学、高校と一勝もする事が出来なかったが、このチームなら、こいつらとなら負ける気はしねえ。そう思って挑んだのに、及川からの最高のパスを俺は決めることが出来ず、青城は準決勝敗退となった。あのトスを決められず、何がエースだ…!そう思ったのに、誰一人として俺を責める奴はいなかった。それどころか、俺の存在を肯定するように背中を叩いてくれた及川、花巻、松川の存在に助けられた。コートを出た後も応援席から応援してくれていた温田達をはじめとする部員達もよくやったと、執拗い位頭を撫でられた。
バスが到着するまでの間、小学校から高校三年になって及川と共に歩んできたバレーを振り返り、感傷に浸っていた。及川と一緒にバレーをするのは高校まで。アイツは卒業後、東京への大学に推薦が決まってる。俺は地元に残る。だから、及川と共に同じコートに立つ最後の試合だった。
「ハジメ…!」
「…は?」
聞き慣れた声にハッとして顔を上げると、そこには涙で顔を濡らした月菜がいた。