第2章 天才シンガー
「岩ちゃんだけズルいよ!月菜ちゃん、俺にも!」
「ダメー!これはハジメにだけなの。」
その言葉が、何だか特別なように思えた。さっきから馬鹿みたいに五月蝿く音を立てる心臓の音がやけに五月蝿く耳に響いた。
「あれ?岩泉、なんか顔赤くね?」
「は?別に普通だ、普通!」
「へー。」
ニヤニヤし乍俺を見る花巻。咄嗟に手が出て、思いっきり花巻の頭を叩いた。拳では無く掌で叩いたのは、コイツが及川じゃなく花巻だったから。加減したつもりだったが、花巻は大袈裟に岩泉痛えよ!と騒いだ。
「珍しいね、岩ちゃんが俺以外に手を上げるなんて。」
「うるせえ!」
「うわ!岩ちゃんがご乱心だ!」
無駄に騒ぎ出す及川を殴ると、それを見てくすくすと笑う月菜。嗚呼、何だこれ。心音が五月蝿い。耳障りだ。