第2章 天才シンガー
「なんかさ、最近岩ちゃんと月菜ちゃんいい感じだよね。」
「は?」
「だってさ、前は迷惑って感じ全面に押し出してたのに、今は普通に仲良さそうじゃん?及川さん妬いちゃうなー。」
報道陣から月菜を助けたあの一件以来、しつこい位まとわりついてた月菜のアタックが止んだのが一番の原因である。だから、前程邪険に思わなくなった。けど、何処かよそよそしいつーか、遠慮してるような月菜の態度に少しばかりの寂しさを覚え始めていた。
「ハジメ!」
「うおっ!?」
突如背中に走った衝撃に驚き声を上げた。
「あれ?月菜ちゃんまだ学校残ってたんだ?」
「ううん、一回帰ったんだけど、戻ってきたの!」
「重てえ!離れろ!」
背中に抱き着いたままの月菜を振りほどくと、笑顔を浮かべ、鞄から何かを取り出した。
「明日発売の新曲ー!」
「お、マジか!?」
「タカヒロ、いる?」
「いるいる!」
「俺の分もあるー?」
「勿論、イッセイの分もあるよ。はい。」
そう言って、花巻と松川にCDを渡す月菜。
「バレー部の皆には色々迷惑掛けちゃったから、私からプレゼント!発売明日だから、今日はこっそりお家で聞いてね。」
その月菜の言葉にバレー部の連中は喜びの声を上げた。月菜の前に列を作り、CDを受け取る部員達。その列に監督とコーチも並んでるのがなんともシュールだった。