第2章 天才シンガー
それから、放課後も待ち受ける報道陣達から月菜を守るようにバレー部の面々で車まで送った。それを申し訳無さそうな表情を浮かべた月菜。
「俺らが好きでやってんだからそんな顔すんじゃねえよ。」
その言葉に、月菜は笑った。
「I like that kind of thing about you.(ハジメのそういう所、好き。)」
それがどういう意味を持つのか分からなかったが、不思議と嫌な気分じゃなかった。寧ろその逆。
出逢った時から我儘で散々俺の事を好き勝手振り回して、終いにはニュース沙汰になるような事をされ、迷惑だと思っていたのに、次第に歌手の〝Luna〟ではなく、〝月菜・フローレス・常磐〟という一人の人間に惹かれていってた。けど、それは多分恋とかそういうのじゃなくて、異国の地で懸命に頑張る月菜を応援してやりたいって気持ちで、別に特別な感情とかそういうんじゃねえ。どことなく及川に似てる月菜を放っておけない。ただそれだけだ。