第2章 天才シンガー
「まあ、冗談はさておき、これ、結構ニュースで取り上げられてたし、月菜ちゃん困るんじゃない?折角、平穏な高校生活を楽しんでただろうにさ。」
「それな。」
「俺らに迷惑掛けないように気遣ってただろうし。」
特に月菜は何も考えてなかったと、昨日までは思っていたが、あの言葉を聞いて、そうも言えなくなった。及川が言っていた通り、記者の目が俺らに向かないように、月菜なりに気を遣ってたんだと思う。それを月菜が言う前に気付いていた及川に何となく腹が立った。
「でさ、それでなんだけど、後ろ姿じゃ岩ちゃんだって分かんないだろうし、皆月菜ちゃんと仲良しだって所をアピールしたら、これ、無かった事にならないかな?って思ってるんだけど。」
「及川にしてはまあ、いい案なんじゃね?」
「ちょっとマッキー。及川にしては、は余計。」
「月菜ちゃんと仲のいい男子が複数いれば、誰か一人が月菜ちゃんと特別な関係にあるなんて思わないだろうし。」
「そこまでする必要あるか?」
「あのね、岩ちゃん。モテない岩ちゃんは分かんないだろうけど、芸能人って言うのは、こういう小さな事が大きなスキャンダルになるんだよ。月菜ちゃんを俺らがちゃんと守ってあげないと。折角日本に来たのに、こんな事で月菜ちゃんの留学をつまらないものにしたくないじゃん。」
まあ、確かに折角日本に来たのだから、帰国する時に、楽しかったと思える留学な方がいいとは俺も思うが、だからって、なんで及川がそんな張り切って月菜の為に行動を取ろうとするのか。いや、まあ、コイツがLunaのファンだってのは、嫌って程聞かされたから理解してるつもりだけどよ。けど、月菜の為だと言って張り切る及川はいつも以上に腹立たしく思えた。