第2章 天才シンガー
「月菜ちゃんいい子だよね。」
「は?普通だろ。」
いや、普通じゃねえか。あんな大っぴらにアピールとか普通の女子ならしねえし、俺が断っても照れちゃって可愛いなんて言ってマトモに話聞かねえし。
「芸能人なのに全然お高く止まってないし、誰に対しても笑顔でさ。」
第一印象はなんつう自分本位で我儘な女だと思ったが、学校にいる月菜はどこにでもいる普通の女の子。あまりにも普通に接してくるから、つい、月菜が芸能人だって事を忘れちまう位に。
「それに、俺らに迷惑掛けないように、学校出たら知らん顔だしね。」
「どういう意味だよ?」
「え?岩ちゃん気付いてなかったの?月菜ちゃん毎日のように外で報道陣待ってるし、月菜ちゃんが報道陣の前で俺らと仲良くしてたら、絶対記者達は俺らに目を向けるでしょ?こないだの生放送の件もあるし。」
言われてみれば、校内ではしつこく絡んでくる月菜だったが、外に出れば全くといい程俺らに目を向けない。いや、でも芸能人だし、自身のスキャンダル予防の為じゃねえのか?知名度が高い分、そういうのはマスコミの格好のネタだし。
「だからさ、岩ちゃんももう少し月菜ちゃんに優しくしてあげなよ。」
そう言った及川の頭を殴った。なんでお前がそれを言うんだよ。