第2章 天才シンガー
「よし、月菜ちゃん帰ろう!」
部活も終わり、及川がそう月菜に声を掛けた。
「いいよ、迎え来るから大丈夫。」
「月菜ちゃん、いつも迎え来るよね?マネージャーとか?」
「うん。いつもはそうなんだけど、今日は仕事無いし、迎えに来るのはSP。」
「やっぱ実在すんだ。まあ、月菜ちゃん有名人だしね。」
「校内は記者の人いないから割と自由なんだけど、一歩外に出たら、何処にパパラッチいるか分からないしね。あらぬ噂とか立てられると困っちゃうし。」
そう及川、花巻、松川に話す月菜を見て、改めて月菜が芸能人である事を認識させられた。
「でもさ、それって自分が困るからじゃなくて、皆に迷惑掛けるからって思ってるでしょ?」
及川のその言葉に月菜は一瞬困ったような顔を見せたが、いつもみたいに笑って、違うよと答えた。
「それじゃあ、皆また明日ね。」
月菜はそう言って手を振って体育館を出て行った。