第2章 天才シンガー
月菜は監督の隣に座り、部員達から渡された物にサインをしていく。その間、俺らは普段通り練習。相変わらず、及川のファンからの黄色い声援に耳が痛む。てっきり月菜も俺に対しそう言った声を上げるのかと思えば、月菜は真剣に練習風景を眺めてた。
そして休憩時間、未だ黙って俺を見詰める月菜。
「…なんだよ?」
「なんか…凄いなあって思って。」
「あ?」
月菜は頬を赤くして、それを隠すように両手で顔を覆った。
「ハジメがカッコいいのは知ってたけど、こんなにカッコいいなんて予想外で…。」
その反応に釣られて俺も赤くなった。女子からの声援を受けるのはいつも及川で、そう言う風に女子から褒められるのは初めてだったから、それが少し気恥ずかしかった。
「月菜ちゃん、俺のサーブ見てくれた?カッコ良かったでしょ!?」
「あー…うん。」
「ちょっと、岩ちゃんとのリアクションの差ありすぎじゃない!?」
それを見て花巻と松川が月菜ちゃんナイスリアクションと言って笑った。
「で、岩泉はいつまで照れてんの?」
「は!?別に照れてねーよ!」
そうは言ったものの、顔の熱は中々収まらなかった。いや、これは違う。照れた訳じゃねえ。いっぱい動いたから体が暑くなっただけだ。そう自分に言い聞かせた。