第2章 天才シンガー
大ファンである月菜からの申し出を及川が断る訳もなく、そのまま三人で体育館へと向かった。体育館に月菜が足を踏み入れると、部員達の目が一斉に月菜へ向かった。普段あまり月菜を見掛ける事の無い一、二年達は特に月菜を見て、本物だ…とか、思った事を口にしていた。
「月菜ちゃんは特別に、ここから見学してていいからね。及川さんのカッコいい姿目に焼き付けといてね。」
「おい、勝手な事すると監督に…」
どやされるぞ。そう言い終わるよりも先に監督が月菜に声を掛けた。
「娘が君の大ファンなんだ。サイン貰えるか?」
「ええ、勿論よ!」
監督はそう言って予め準備しておいたであろう色紙とサインペンを月菜に渡した。コーチもその後ろに色紙を持って並んでる。それを見て部員達が監督達ばっかりズルいと声を上げると、
「順番に皆にもサインするから、喧嘩しないで。」
その月菜の言葉に部員の殆どが歓喜の声をあげた。