第2章 天才シンガー
家に帰り風呂と夕食を済ませ、部屋に戻り、渡から借りたiPodに入ったLunaの曲を聴いた。初めてLunaの曲凄く聴いた時もそうだったが、その歌声は一瞬にして心に浸透する不思議な歌声で、気が付けば、iPodに入っていた全ての曲を聴き終わっていた。曲は全て英語で言葉の意味は曖昧にしか分からなかったが、俺はLunaの歌声に夢中になっていた。普段は及川みたいにヘラヘラ笑って、俺の気持ちを無視して自分本意に動くのに、Lunaの歌声は〝地上に舞い降りた天使〟と言われるだけの事はあった。
Luna。アメリカで絶大な人気を誇る女性シンガー。アメリカ人の母に日本人の父を持つハーフ。母親は一昔前に〝奇跡の歌姫〟と呼ばれ、日本でも絶大な人気を誇ったあの、エミリア・フローレス。父親はレコード会社の重役。そんな二人から産まれた月菜もまた母親の血を引いて才能を開花してる。恵まれた環境に人目を引く容姿、そしてあの歌声。住んでる世界が全く違う、普通に生活していたならば出逢う事もないであろう彼女と偶然にも出逢ってしまった俺。それを月菜は運命だと言ったが、正直、迷惑な話だ。小学生の頃からずっとバレー、一筋で…まあ、今まで彼女がいなかったとかそういう訳ではないが、バレーに支障が出るならばバッサリと切り捨てるような浅い関係の彼女しかいなかった。及川と共に打倒白鳥沢という目標を掲げ、その目標を掲げてから六年が経とうとしている。その目標が今、叶えられるチームとなった今、月菜という存在は悪いが、迷惑でしかない。俺みたいな奴が月菜の周りにいなかったから今は物珍しさから興味を示してるだけで、放っておけばその熱もいずれ冷めるだろう。そう思い乍寝床についた。