第2章 君が欲しい(石川/R18)
あたしはこの日、高校の演劇部の同窓会に来ている。会場はコンクールや文化祭、定期公演の打ち上げで使っていたお店。
あたしは積極的に話せるような女の子じゃないから端の方でジュースを飲んでいた。
「彩花!!久しぶり!元気だった??」
『奈都ちゃん!久しぶり、元気だよ。』
話しかけてくれたのは三年間同じクラスで親友の如月奈都ちゃん、明るくて誰にでも話しかけるいい子なんだ。
「ね、石川先輩、来てるよ?話しかけたら?」
『えっ?!む、無理だよ……先輩は、今、大人気の声優さんなんだよ?あたしが話しかけるなんて……できないよ……』
「もう……彩花は相変わらず消極的だなぁ。しょうがない、あたしに任せなさい!」
『え?何するの?』
あたしがそう言いきる前に彼女は先輩に話しかけていた。
あたしが高校三年間ずっと片想いをしていた先輩に……
「彩花~!おいでよ~!」
『う、うんっ!』
先輩の近くに行き、あたしは小さく奈都ちゃんの服の裾を摘まんだ。
「彩花ちゃん、久しぶりだね?元気だった?」
「あー!先輩この子の事名前で呼んでる!ずるーい!!」
「この子はいいの!お前と違って可愛いじゃん。」
『え、あ、あの……先輩、あたしの名前覚えててくれたんですか?』
あたしの名前なんて忘れられてると思った。
すると先輩はクスッと笑って、「当たり前だよ?こんなに可愛い子の名前を忘れるわけないよ。」とさらりと言った。
『あ、あたし、かわいくなんてないですっ!むしろ、奈都ちゃんの方が可愛いです。』
「そう?俺は彩花ちゃんの方が可愛いと思うけど?」
先輩は意地悪な声であたしにそういった。
『うぅ……』
あたしは恥ずかしさでうつむくと手に持っていたグラスが無いことに気づいた。
『あ、あれ?グラスがな…「彩花ちゃん、何か飲む?」え?あ、じゃあ…オレンジジュースを…』
「あれ、彩花ちゃんお酒、苦手なの?」
『あ、明日学校で今日お酒を飲んだら朝、起きれなくなるから飲まないんです…』
先輩はそっかと言って自分のグラスとあたしのグラスをもって飲み物を取りに行った。