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人魚姫ストラテジー【HxH】【裏】

第15章 母と私


「ひっどい親だな。まあ、世の中にまともな親なんていないか。」
部屋でぼーっとしていたら、一緒にいた人に話し掛けられた。驚いた。
「あ…えっと…。」
後ろにいた人は自分よりかなり身長が高い男の人だった。
黒いさらっとした髪を流し、漆黒の瞳はその先に絶望しか見えていないようだった。
ルルは戸惑ってしまった。初めて普通に話しかけられたから。
「いいのです。わたくしが出来ない子供だから、お母様は失望されているのです。」
「そんなことはない。俺は今まで色々な人間を見てきたが、どいつもこいつも糞みたいな奴ばかりだった。
お前は、母親の言いなりになっているただの人形だったとしても、努力という才能がある。何やっても長い時間はかかるが上手くいくタイプだ。」
「…!」
人生で初めて誉めてくれたのは、母ではなく彼だった。
彼はパーティーの日だけのボディーガードだった。
狙われるようなことはないと言えど、人がよく集まるので、一応雇ったのだろう。
普段どういうことをしていて、どういう人なのか、そういった話はしないようにと言われたが、野暮ったい質問だった。
とにかく、一緒に話すことが嬉しかった。
「絵描いてるんだな。」
「絵は、好きです。」
「趣味なんだ?」
「しゅみ?」
「俺は読書だけど、要は時間があったらやってて、それなりに楽しいって感じること。」
「…そうかもしれません。」
彼の前だと、ちゃんと表情を出せている気がした。
絵の先生が来なかった日から、ずっと笑っていなかったことに気付いた。
「見ていいか?」
「どうぞ。」
ルルが手にしていたスケッチブックを受け取り、ぱらぱらとページを捲る。
「…上手いな。もう絵はやめたってあの母から聞いたが、なんで続けないんだ?」
「………。」
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