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人魚姫ストラテジー【HxH】【裏】

第15章 母と私


そう、あれは10年前、まだ屋敷にいた頃。
その日、大きなパーティーがあった。勿論カヅキの屋敷が会場で、母が主催だった。
どういったことで開かれたか記憶にはないが、とにかく盛大であらゆる方面から偉大な人物や博識ある人物が呼ばれていた。
ルルはまだ部屋で、派手なドレスを着せてもらっていた。
着替え終わると、母が入ってきた。
母は自分を誉めるでもなく、見ることもなく、とある人物を紹介して出て行った。
自分はどうでもいい存在。

自慢ではないが、この年では既にほとんどの義務教育を終わらせ、あらゆる習い事を叩き込まれていた。
それが、母の命令だったからだ。
母は絶対に自分を誉めなかった。見ることもなかった。
それは、全て、後継者として「当然の義務」だったから。
しかし、子供が親を信じるという心は、本能といえど素晴らしい。
「いつかは誉めてくれる。自分はまだまだだから誉められないんだ。期待以上のことをしないといけないんだ。」
毎日そう唱えて頑張った。
何事も期待以上にと考えれば考えるほど、何も残らない。
母の前では緊張して強張る表情。
一人きりの時も笑えることが少なくなった。
それでも、習い事で絵だけは大好きだった。
誉めてくれなくても、観てもらえなくても、賞を取って何も言われなくても。
絵だけは好きでいつでも描いていられた。
絵は辞めたくないと唯一の我が儘を、人生で初めて言った。
次の日、絵の先生は来なくなった。
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