第14章 向き合う気持ちと少女
夜、部屋に戻ると、ベッドに沈んでも眠れないでいた。
もやもやとする感じ。何なのだろうか。
ぼーっと天井を眺めていると、
「どうした?」
と不意に話し掛けられた。
声のする方を見ると、さらっと流れた黒髪が少し顔にかかるクロロの姿だった。
「…いいえ。何でもありません。」
そうは言うが、彼女の僅かに出る表情は少し苛々としている。
「そんなツンケンな態度で何でもないはないだろう。」
嘲笑って彼は言う。
「お前の望みはなるたけ全部聞きたい。
言ってくれるか…?」
優しい表情で続けた。
ルルはそれに違和感を感じる。
いや、それまで彼としている会話全てにだった。
自分に向けられている会話のボールなのに、いつもそれは自分を通り越して、違う人が取って行ってしまう。
誰が?
「…クロロさんは、いつもわたくしの何に話し掛けていらっしゃるのですか?
わたくしに違う方を重ねていらっしゃいませんか?」
そう、おかしいのだ。
見ず知らずの、ましてや記憶もなければ名家と言われる実家をでている自分には何もない。
常識ならこんな奴には親切にするのも可笑しく、匿ってもらい、尚且つあらゆることを世話してもらっている。
何故そこまでするのか。クロロはその言葉ではっとする。
「…悪いな。まだ、前のルルを吹っ切れてないようだ。可笑しいだろう?
ルルはルルなのに。」
その言葉にルルは涙を流した。
「申し訳ありません…!わたくしが口にして良いような言葉ではございませんでした…。
いらない子でごめんなさい、前のわたくしに戻れなくてごめんなさい…!」
「そういうつもりで言ったんじゃ…いや、そのつもりだな。謝るのは俺だ。ごめんな、ルル。」
自分に背を向け、尚も泣きながら謝る彼女の背中を優しく包んだ。
ルルはルルだ、そう思って接しているつもりだったのに、話す度、触れる度に、前のルルを必死に探している。
その自分に対して情けなくなる。
彼女は彼の為に泣いているようだった。
泣く時の癖が同じだ、思わないようにしていたのに、自分の中は完全に彼女の居場所を作って待ってしまっていた。
「どんなお前でも、愛してる。」
自分に言い聞かせるように呟いた。
泣き疲れたルルは眠っていたので、その声が聞こえたかはわからなかった。