第13章 迎賓と少女
ヒソカは電話でかなりクロロ本人と死闘を繰り広げられるかを期待していた。
団員同士のマジ切れ禁止。
重いそのルールが長い間のし掛かってもやもやしっぱなしだった。
だからこそ、彼本人を怒らせることで、本気で刃を自分に向かせようと試みたのだ。
ルルが旅団に連れてこられた日、確信した。
これしかないと。
最初は彼女の初めてを奪ってしまおうと思っていたが、四六時中同じ部屋にいるので困難だった。
次の策を考えているとき、ふと情報を得た。
カヅキ家とルルの繋がり。
ルルが本に書き込みをした事実。
本との契約。
クロロは普通の人間として自分を求め、接し、心開いた彼女に心底依存している。
彼女との触れ合いが今全てだと言っても過言ではないほどに。
その関係を壊せば、簡単に怒りを露わにする事は計算出来ていた。完璧。
あとは闘う舞台を決めなくては。
ぞくぞくする感じに笑いが止まらない。
だが、電話越しの相手の声を聞いて、すぐに落胆してしまった。
「…ヒソカ。俺を殺したいんだろう?」
声にいつもの、威厳、殺気、決断力、たまに恐ろしいとすら思う覇気、それらが全く感じられない。
「殺せばいい。いつも言っているだろう。死ぬ覚悟はいつでも出来ている。」
「随分予想外の台詞を吐くね…。」
あまりにも驚いて本音を出してしまう。
依存し過ぎるが故に、無くなった時の絶望が大きすぎる。
そんな現実の問題に本格的にクロロはぶつかっていた。
自分でやってしまったことだが言われたままに、ルルの本との間で交わしてあった契約を破棄してしまった。
彼女の記憶と声が戻り、出会ってからの彼女が消えてしまった。
「ルルが生きているならそれでいいと思った。そこに自分がいなくても。だが、ルルの記憶には、いたかったんだ。」
ぼそっと呟くように彼は言う。
ヒソカは無言になり、口を噤んでしまった。
今までクロロと死闘を繰り広げる為に舞台を考えて伏線まではったというのに、彼はあまりにも彼女にのめり込んでしまっていた。
そう、予想以上に。