第12章 声と少女
「団長、知らないと思うんだけど、その本は思い人思われ人同士がその契約したページを見ないと契約違反ということで、名前を書いた人が魂を食べられちゃうんだ。
ルルの衰弱は、それが原因かもねぇ?」
「…貴様…。」
「声を聞きたいなら電話越しでもいいだろう?早くしないと、どっちにしても消えちゃうよ?」
「どうすんの、団長…!」
携帯を片手にクロロが微動だにしなくなった。
こういう場合に限ってこの奇術師はいきなり真実を言ったりする。
「名前を削除するという選択しかないよね?」
電話越しにくくっと喉で笑う声が聞こえる。
クロロは本のページを開くとすぐにルルの名前を見つけ、紙に集中すると、一瞬のうちにそのページだけを燃やした。
これで紙面上の契約破棄が成立する。
「…削除した。代われ。」
「…いいよ。」
ヒソカが何かを言い掛けようとして止めた。
何故かそう思えた。
電話に耳を宛てる。
緊張して心音が邪魔だ。
いやな予感がする。
「ルル?俺だ、わかるか?」
「…どちら様ですか?」
音程の高い、せせらぎのようなさらさらした声。
容姿と同じで幼いあどけなさが残っている。ルルの声。
もっと聞きたいのに違和感が拭えなくて集中出来ない。
どういうことなんだ?
「クロロだ。お前はいつも団長さんって呼んでいるがな。」
思い出話をして、思わず笑みが漏れる。
「団長さん…?申し訳ありませんが、存じません…。」
「おい、タチの悪い冗談はやめろ。何を言ってるんだ?」
冗談じゃないのはわかっている。
彼女は、語彙が少ない。
いつも柔らかくしか話すことが出来ない。
なのに芯があるかのような口調。
今の電話の相手は誰だ?
壁を何重にも感じる。
遠い、遠い相手。
「お前は誰なんだ?」