第11章 トランプと少女
ルルを横抱きにすると、パレードカーに乗り移った。
彼女は驚いてクロロの首にしがみついた。
「おやおや、やっと見つけてくれたね…。」
いつもの嫌みの効いた猫なで声で話しかけるヒソカは、羽をまとい、いつも以上に派手な服装をしていた。
「悪いね、今道化師のアルバイト中なんだ、話しかけないでくれないかな。」
「殺気を垂れ流して何を言っているんだか。本も今持っているんだろう?渡せ。」
「本?何のことかなぁ。」
舌なめずりをし、誤魔化そうと空を見上げた。
クロロが痺れを切らし、ナイフを投げつけた。
しゅっと横切ると、羽が飛び散り、観客が盛大に歓声をあげる。
「団長命令に従えないのか?まあ貴様にそんなもん最初から期待していないが。」
もう一本、美しい装飾のナイフを投げると、また羽がふわっと散る。
「大事な衣装なんだからやめてよねぇ。」
「全裸になる前にさっさと本を渡すんだな。」
頭に向けてナイフを飛ばす。頭の生花で出来た飾りが吹っ飛び、花びらを捲きながら地に落ちた。
歓声がだんだん大きくなっていき、ヒソカが興奮しているのがつたわってきた。
殺気が強すぎる。
ふと胸のYシャツを掴まれた気がして、見るとルルが殺気にあてられて震えだしていた。
「まずい…。」
ルルの様態を案じたのが災いしたのか、その隙にバンジーガムでルルは宙を舞ってヒソカの胸に落ちた。
カタカタと震えている小さな身体をきゅっと抱き締めるヒソカ。
クロロはすっと立ち上がり、拳をひゅっと鳴らしてヒソカの顔横を狙う。
狙い通り止められ、反対側にも一気に叩き込む。
片手がルルで塞がっているので、防がれる可能性が低いとみた。
が、その考えに反し、同じ腕で拳を受け止めた。
このくらいで倒せる相手ではないことはわかっていた。
「いいねえぇ、本気の団長と早く遊びたいよぉ…。」
妖艶に笑うと、ルルを抱え直した。嫌だ嫌だと首を振る彼女。
助けてと口パクで伝えたいのに歯が噛み合わない。
クロロの目をじっと見据える。