第10章 月潮と少女 裏
首を横に振ると、急いで俺から離れようと動いたのを見逃さなかった。
必死で離れようとする彼女の腕を握った。
あまりにも細くて少し驚いてしまった。
毎日見てる身体なのに、知らないこともまだまだあったな。
「どうしたんだ?嫌いになったのか?」
急にそんな質問が自分にも浮かんできて不安になった。彼女が離れたらどうしようかと思う。
首を横に振り、否定を表した。
「じゃあなんで家出なんでしようとしてるんだ?」
「だんちょうさん、わたしのこと、いらないって…。」
「言ってない…!誰が言ったんだ?」
「だれも…だれもいってない。でも、だんちょうさん、なんにちかわたしになにもしてない…。 わたし、それしかできないのに…あとなにもないのに…!」
ルルが声をあげずに涙を流し、短く嗚咽を繰り返しながら泣いてしまった。
愛してる、見返りなんか求めてない、傍にいるだけでいい。
今まであまりにも言葉が少なかった。
彼女はとても悩み苦しんでいたのだろう。
たった何日か出来ないセックスに、彼女は罪を感じ、俺は不満を感じていた。
ルルは、情事をずっと傍に置いてもらう為の手段としていた。
だから一生懸命どんなに嫌でも答えてくれていた。そう思うと勝手な自分に酷く腹が立った。
さっきシャルがなんであんな顔で俺に疑問をぶつけてきたのか漸く理解出来た。
「わたし、それしかよろこんでもらえてない…!
でも、どこにもいけない…だんちょうさんのそばにしかいられないから…!」
「違う、違うんだ…!」