第5章 抜き打ちテスト
<加奈子side>
先「・・・はい、もう一回」
ただいま、2回目の追試の解答用紙が戻ってきたところだ。
『・・・はい・・・』
まただ・・・
もう一度、教科書を見つめる。
次こそは、合格したい・・・
周りを見ると、共に受けていた仲間たちも
1度目で合格し、先に帰ってしまった。
『・・・はぁ・・・』
ため息がこぼれる。
先「・・・・・・・・・・・」
渡辺先生もぼーっと外を見たり、
私を見たり、とても暇そう・・・
どうしよ・・・
次こそ・・・
教科書にかぶりついて見ていると、
『わぁっ!』
気づくと、目の前に先生が立っていた。
先「・・・・・・・・・・・・」
ぼーっと私を見下ろしている。
『・・・せ、先生?』
え、なに?
いつもの追試の時はずーっと教卓にいるのに・・・
もしかして、呆れられた?
もう帰りたいとか・・・?
あ、きっとそれだ・・・
そうと考えたら、それしか思えなくなってきた・・・
先「・・・・・・・・・・・」
『・・・あの・・・先生・・・』
先「・・・ここ」
『え?』
謝ろうと思ったとき、先生が話し出し、
私の教科書の1点を指差していた。
『・・・えっと・・・』
先「この範囲では、ココとココが重要」
『へ?』
思わず、先生を見上げてみる。
先「だから、重要なところ」
『あ!はい』
あ、教えてくれたんだ・・・
『あ、ありがとうございます・・・』
先「いいや?・・・(笑)」
あ、笑った・・・
久々の・・・この笑顔・・・
と、とにかくよかった・・・
呆れられてんじゃないみたい。
そうだ、この人は昔からこうだ・・・
ちゃんと待ってくれる・・・
とっても優しい人だった・・・