第3章 ~聖川真斗の場合~
外に出ると、ひんやりとした風が私の頬を撫でた。
今日は休みなので、友人の愛結美と買い物に行く約束をしていた。
「あー、さっむ…。
そーだ!もうすぐ真斗の誕生日じゃん?
何かプレゼント用意しないの?」
愛結美はニヤニヤしながら私を見て言った。
真斗とは、私の片想いの相手である聖川 真斗さんのこと。
入学式の日に彼の姿を見て、私は一目で恋に落ちた。
それ以来、私は聖川さんのことばかり考えている。
恋愛禁止なので、この気持ちを知っているのは相談相手でもある愛結美だけ。
愛結美の質問に答えずに、うーん…と悩んでいると
「唯はさ、真斗と距離を縮めたいって思わないの?」
今度は真剣な眼差しで私を見た。
「そりゃ、縮めたいけど…。
でも、私から急に貰ったらビックリしない?」
聖川さんとはクラスが同じというだけで、特別仲が良い訳ではない。
私にとっては気になる存在だから、挨拶したり、少し曲の相談をしたり…些細なことでも嬉しいし、全部覚えている。
でも、聖川さんにとっての私は、少し話したことがあるクラスメート…。
だから、急に誕生日プレゼントなんて貰ったら困っちゃったりしないか不安なのだ。