第5章 ~一ノ瀬トキヤの場合~
なんて、後悔しても遅い。
「そっか、人に聞けばいいんだ!」
と、周りを見渡すけれど街から外れてしまったのか人の姿は見当たらなかった。
「あっ、調べればいいじゃん!」
スマホの電源を入れると、充電マークが表示され、起動出来なかった。
「…どうしよう…?」
迷子になってどれくらいだっただろうか…?
あたりはもう真っ暗で、頼れるのは街灯だけだ。
「…本当に、一ノ瀬さんと街を歩けてたら…」
“迷子になんてならなかったのかな…?”
そう思ったとき、
「まさかと思いますが、その歳で迷子ですか、北橋さん?」
勢いよく振り返ると、そこには街灯に照らされた一ノ瀬さんの姿があった。
「一ノ瀬さん…。」
今、一番会いたかった人に会えて嬉しい反面、迷子になった所を見られて恥ずかしい気持ちもある。
どんな顔して良いかわからず俯くと、
「何処へ向かっていたのです?」
一ノ瀬さんは、呆れたような調子で言う。
「えっと…寮です…!」
「…分かりました。
私も丁度、戻るところでしたし一緒に帰りましょう。」
そう言って一ノ瀬さんはスタスタと歩き出した。
「ま、待ってください!」
私も慌てて一ノ瀬さんを追いかける。
こうして、クリスマスモード全開の街を二人で歩いているとなんだかデートみたいで、意識してしまう。
チラチラと一ノ瀬さんの様子を伺っていると、
「私の顔になにか付いているのですか?」
と、不思議そうに聞かれてしまった。