第6章 案山子
サクラが示した場所の通りに、牡丹は花を手向ける。どうせ長期保存できないのであればと、育てている薬草を頂戴して、彼方者への捧げものにした。
「付き合わせてしまって、すみません」
そう言うと、サクラは困ったように笑う。少し首を傾げて、ペロリと舌を出す仕草が、同じ女性として可愛らしく思えた。
「私もしばらくぶりで…そろそろ来ようかと思ってたんです」
カカシ先生は忙しくてもよく来るみたいですけどと付け足す彼女は、どこか気遣わしげに目を逸らす。
あの人を構成する人々。喪ってしまった家族や仲間たちに、何を報告したらいいのだろう。私は彼の隣にいていいのだろうかと問いかけても、冷たい墓石は何も答えない。その名前たちに触れて、想いを馳せるも、見知らぬ人々の影が薄く集まっては消えるように、もやもやとした感情が宙に浮いているだけだった。
「私、牡丹さんに知っていて欲しかったんです。先生のこと」
俯いて墓石を撫でる牡丹の背中に話しかけるサクラの声音は、荷が降りたように、どこか晴れ晴れとしている。思いの丈を述べる彼女の声を聞きながら、牡丹はそこに刻まれた忍の名前を見ていた。