第7章 アルバイト
それで、離れてしまう前に最後の仕事を黒尾さんに見て欲しいのか。
そういう性格だったかな、うちのイトコは。
「なんか企んでるだろ。俺に最後の仕事を見てほしい、なんてガラじゃねぇし。」
私の頭に過った疑問は黒尾さんの口から出た。
「当たり。今度の花婿役で呼んでるモデルさん、後輩みたいでね。いや、この前打ち合わせで会った時、大分背が高いからスポーツでもやってたの?って聞いたらバレーやってました、って。」
「モデルなんて背は高いもんじゃね?」
「確かにそうだけど、なんかピンと来てね。出身校聞いたら音駒って言うからさ。」
トントン拍子で二人の会話は進んでいる。
口を挟むつもりは一切ないから、それは構わない。
「知り合いか分からねぇだろ。しかもブライダルフェアに男一人で来いって何考えてんだ。」
「え?アンタ彼女は?」
「別れた。つか、居ても期待させるだけだし連れてけねぇよ。」
「じゃあ…りらと来れば?」
構わない、つもりだった。
巻き添えさえ食らわなければ。
二人の視線が私を向いて、すでに巻き込まれそうな状態になっている事に気付く。
「私も黒尾さんとは結婚したくないんですが。」
「とは、ってなんだ。俺、尽くす男だぜ?」
「家事に勝手に手を出して、仕事を増やすイメージしか浮かびませんけど。」
拒否を伝える為に、今度は私と黒尾さんの言い合いが始まった。
きとりちゃんはクスクスと楽しそうに笑っている。
「りら、少しずつ嫌な事は言うようになったね。…でも今回はカップルのフリ、するだけなんだから付き合ってよ。」
ね?なんて笑顔で言う彼女は拒否を許さない目をしていた。