第39章 HAPPY WEDDING
2人の話に驚きはしたけど、私にとって良い話だったから、信じる事にする。
だから、昨日も赤葦さんがきとりちゃんを連れて帰ったと思えば、納得も出来る。
ただ、色々と聞きたくても、他の親戚の相手もしなければならず。
たまにチラチラと2人の様子を眺めるしか出来なかった。
その内に式の開始時間になり、親戚が先に聖堂に移動していく。
だけど、何故か、妹の1人が一番最後まで残っていた。
迷うような仕草の後、私に差し出されたのは小さく折り畳まれた紙。
「テツローくんの前で、渡していいものか分からなかったんだよね。でも、やっぱ渡さないのは、ダメだと思ったから。」
そう言い残して、妹も出ていった。
紙を開く。
‘お幸せに’
中央に、たった一言。
見覚えのある文字で書いてあった。
「…おめでとうは、祝えないから言えない。だが、りらの幸せを願う事はしたいってとこだな。
誰からか、分かってるだろ?」
差出人のない手紙。
横から覗いた鉄朗さんも、内容で誰からかは分かったようだ。
分かっていると、頷きで返して。
「幸せになると、誓います。」
そっと、手紙に向かって呟く。
私は、この手紙の差出人に誓いたい。
貴方とは、道を違えたけれど、私はちゃんと幸せになります、と。
その呟きの意味は、鉄朗さんにも伝わっていて、唇を唇で塞がれる。
誓いのキスは、言葉を封印する為にある。
私には、神様の前より、親戚や友人の前より、この場での誓いが大切だった。