第3章 歓迎会
コンビニに辿り着くと一応は目的としたお酒のある棚に向かう。
本当は冷蔵庫に残っているから、あまり量は買えない。
適当におつまみやらも一緒に買ってコンビニから出た。
荷物は赤葦さんが全部持ってくれた。
私もそうだけど、この二人もあまり無駄話するタイプじゃないらしい。
道中、会話なんかなく静かに家まで帰った。
「ただいま戻り…。」
帰りの挨拶をしようとして止まってしまう。
黒尾さんに堅いって言われたんだっけ、と思い出した。
そんな内心は知らない二人は不思議そうに私をみている。
何でもないです、と首を振って廊下を歩いた。
リビングに入る扉に手を掛けた時、突然壁が音を立てる。
どんっ、と何かぶつかったような音。
何があったのか確かめようと扉を慌てて開けた。
黒尾さんが壁に両手を付いている。
その腕の間には何故か木兎さん。
黒尾さんの右手が壁から離れたと思うと、木兎さんの顎を掴んだ。
喧嘩じゃないのは分かる。
所謂、壁ドンじゃないか、これ。
大柄な男二人でやっているのは見ていて気持ちいいものじゃない。
「…何やってんスか。」
見えた光景にどこから突っ込もうか考えていると、一緒に入った赤葦さんの声。
「いや、さ。赤葦、りらが嫌がってるの分かって連れ出したでしょ?
紳士で、モテるんだろーな、って話したら、クロが口説くのは俺のが上手い、とか言い出して。木兎も俺のがモテる、とかなって。現在に至る。」
説明をしているきとりちゃんの手には、動画を撮影中のカメラ。
「デッカイ男が、これまたデカい男にこんな事してるの撮って需要あります?」
動画を覗いて呆れた月島さんが不審感を隠しもせず、壁にまだ張り付いている二人を見た。