第34章 episode0<epilogue>
私達の中で築かれた家族の輪は繋がっている。
それは、何年経っても変わらない。
皆が就職して家を出ても、お互いに交流はあるようだし。
この離島に台風が近付いているニュースがあれば、皆して個別に電話を掛けてくるもんだから、こっちが対応に困るくらいだ。
もしかしたら、仕事を辞めない限り東京には戻れないかも知れない。
でも、物理的には一人だけど、独りじゃない。
孤独ではない。
私には、心が繋がっている家族がいる。
親を失った傷は確実に癒えていた。
それを分かっているから、淋しくない。
こっちに永住する事になっても覚悟は決まっていて、今後の人生について考えていた。
その中で、気掛かりな事が1つ。
私がこっちに永住するなら、りらはどうなるか、という事。
頑固な彼女は、私に‘おかえりなさい’を言うまでは家を空けない。
私の為に、空の家にしない。
これでりらが独り身だったら、話は早い。
私がたまに帰る家の為に、そこに住み続けてくれればいいだけ。
当初の目的である、おかえりなさい、は一生言えないかも知れないけど、住み慣れた家を奪う必要もない。
ただ、りらは独り身じゃないのだ。
独身は独身だけど、彼氏がいる。
イイ歳した付き合いで、まさか結婚は考えていない、なんて事はない。
あの家に、約束で縛られていたら、りらは結婚出来ない事になる。
だって、人の家で新生活なんかしたくないだろう。
2人だけの家で1から家庭を作りたいのが普通だ。
おかえりなさいがない家になっても、りらが幸せな家庭を築いてくれるならそれが良い。
正直にそれを言ったら遠慮と取られて、帰るまで出ていかないと決めてる、なんて意固地になりそうなコだから言えなかった。