第33章 episode0
引かれたよな。
完全に嫌われたよな。
下を向いて、皆の顔を見ないようにする。
皆も黙ってしまって、重い沈黙が流れた。
「…そんな事か。まー、きとりちゃん、会った頃の顔見てたら一回くらい何かやってそーな気ィしてたしぃ。」
こんな時、沈黙を破れるのはやっぱり木兎だ。
「ま、そうだな。お互い生きてんなら、結果オーライだろ。」
続くのは、クロ。
「その人が、貴女を護る為にやったんでしょう?きとりさんが、故意に刺した訳じゃない。」
「本人同士で解決している事件を聞いて、それについては無関係の僕達が首を突っ込んで怒るのは違うデショ。」
赤葦も、ツッキーも。
私を軽蔑しなかった。
「いや、怒るとかじゃなくて。引いたりしないの?」
こんな事までも受け入れてくれるのは嬉しいけど、何でそこまでしてくれるのかは疑問だ。
「家族が、何かの事件の加害者になっても、庇いたいし護りたいって普通の感情じゃね?」
迷う事なく答えてくれたクロと、同意するように頷いている他の皆。
私の同居人達は、最高にイイ男達で。
私の大切な家族。
「…もー!皆に愛され過ぎて困っちゃう。私、モテ期?」
照れ臭くて、ふざけた事を言って、笑う。
一緒に笑ってくれる皆との絆は、離れて暮らしても壊れないと確信出来た。
その数分後。
インターフォンの音が聞こえて。
この家に、彼女…熊野りらがやってきた。
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