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第33章 episode0


‐黒尾side‐

センパイが怒鳴るのを、高校時代は何回も見た事はある。
感情表現が豊かな人だったから、怒るのもいつも全力だった。

だが、一緒に暮らし始めてからは一度もなかった事だ。

俺と再会してから、喧嘩を売られる事は何度もあった。
特に付き合ってる時なんか、酷いくらいだった。
でも、この人の根底にある‘失いたくない’気持ちが、どっかにブレーキを掛けて。
本当に感情のまま、怒鳴ってきた事はない。

だから、正直に驚いた、が感想。

こんな事を考えている間も、怒鳴り声は続いている。
その、感情を剥き出しにした顔を見ていると、笑えた。

「…クロ!何笑ってんのよ!」
「…わ、悪ぃっ!ふっ…!くくっ!」

完全に、俺に目掛けて落とされた怒声も気にならない。
笑いが、止まらない。

別に、怒った顔が面白いとかじゃねぇんだ。
心底、嬉しいから、笑えるんだ。

だって、この人は、俺に色々な感情を見せてくれてはいたけど。
怒りっていう、感情だけは見せなかった。

俺がバイトで朝帰りした日も、遅くなった事を心配して怒った、というよりは。
連絡が無くて淋しかった、とか、独りが辛くて哀しかった、が優勢の顔で。

怒ったら、感情のまま喧嘩したら、本当に嫌われて失う、と…。
嫌われようとした台詞吐いてる時も、顔はそういうのが見え見えだった。

人間は、喜怒哀楽がある動物。
怒る事も、本能であって、大事な感情。

分かってる。
この感情を引き出したのは俺じゃない。

木兎だ。

無駄に余裕ぶって、大人なフリして、派手に喧嘩するのを避けた俺じゃ、出してやれなかった感情。

笑顔を護りたいとか、キレイゴトで飾って、この人の中にある感情の一部を完全に握り潰していた事に気付いた。

そんで、自分の本当の気持ちにも。

笑顔を護りたい、も間違いじゃねぇけど。
この人に、熊野きとりらしく。
感情を全力で表現して生きて欲しいんだ。

勝手に恋だ愛だと決め付けた、未練の鎖が解けた気がした。

女だから、男だから、なんて性別なんざ関係なく。
人間として、彼女が好きで、大切なんだ。
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