第33章 episode0
…つもり、だった。
クロは目敏い方だと分かっていた。
私の心境の変化を見抜いたようで、彼女関連は勿論、学校やバイト先の話もしなくなった。
そうすると話題なんてほぼ昔の話だったり、私の仕事の愚痴だったり。
パターン化した会話はあまり長続きしないものだ。
「…クロ、彼女は?」
いつまでも気を遣わせるのも悪いと思って、一番触れたくない部分を自ら問い掛けた。
「…喧嘩中。」
この話題が私から出るのが意外だったようで、嫌そうに視線を外して呟くような答えが返る。
正直、その内容が私にとっては意外だった。
私とは、喧嘩になった事はない。
いくら喧嘩を吹っ掛けても、笑って許してくれてた。
暴言を吐いたり、時には手が出たり、私が一方的にやっただけだ。
クロは、止める事はしても言い返したり、やり返したりしなかった。
落ち着いた頃に諭されたり、説教される事はあったけど。
興奮している状態の人間に、そんな事をしたって火に油だと分かっているようだった。
そんなクロが、喧嘩なんかするだろうか。
「彼女に、な。高校時代の先輩の家に居候してるのは言ってたんだよ。」
疑問は顔に出ていたようで、クロが話を始める。
「それが、ドコからか…まぁどうせ木兎だろうけど、その先輩が女で、元カノだってバレてな。」
「…それなら、出ていきなよ。彼女、大事でしょ。ほら、彼女が我慢出来る期間決めて貰って、それまでに引っ越すか実家帰るか。」
黙って聞こうと思ったけど、それは出来なかった。