第29章 ○○のような存在(黒尾エンディング)
物理的に止めてまで、言わせてくれない。
そんなに私から告白されるのが嫌なのか。
また、流れてしまう涙。
情に訴えようとする、狡い感情が生まれてきて嫌だ。
「誤解すんなよ。俺、自分から言いてぇってだけだから。」
ピタりと、涙が止まった。
いや、涙というより、時間が止まった気がした。
これでは、私が今から告白されるようで、信じられない気持ちで固まった、が正しいか。
「…あのな、ニブ過ぎんだよ、お前。何が楽しくて、ただの妹に、何でもねぇ日にプレゼントとか贈るワケ?」
誕生日とか、イベントだからって義務的なものじゃなく、プレゼントを贈る理由。
それは、ただ相手に喜んで欲しいからだと思う。
喜んで欲しい理由は様々だろうけど、ただの妹にはしないって事は…。
女としての、私に喜んで欲しいって事だと、思いたい。
口から手が離れた。
両手で持ち直された箱が、目の前に差し出されている。
箱に、手を伸ばす。
受け取る意思を示すように。
でも、重要な部分は言ってくれていないから迷って、箱を掴めない。
「…黒尾さん。聞いて、いいですか。」
「どーぞ。」
「妹じゃないなら、私は何ですか。」
「惚れた女。」
あまりにも、あっさりと言われた。
本当にそうなのか、疑いたくもなるレベルである。
「…嘘でしょう。」
「ホンキですよ。お嬢サン。」
この状況で、ふざけた返しが出来るのは最早尊敬に値する。
プレゼントを受け取るのすら嫌になって、引こうとした手が掴まれた。
「りらが、好きだ。本気で、女として。」
今度は、真剣に。
真っ直ぐ、私を見てくれている。
心臓が痛くて、何も返せない。
「…こーゆー真面目なの、似合う男じゃねぇだろ?俺は。ふざけた顔して、紳士ぶってるだけ、のがいいんだよ。」
また、ふざけた笑顔。
どっちが本当か、分からない。
「…じゃねぇと、さ。」
手が引かれて、顔が近付く。
「狼にも、なれねぇだろ?」
笑みの形に歪んだ唇が近付いて、私の唇と重なった。