第20章 理解者
なんで、こんなにも私の事を理解しているのだろうか。
悩みの全てが筒抜けになっているようで恥ずかしい。
でも、黒尾さんは知らない。
私は狡くて、最低な手段を使って木葉さんを繋ぎ止めた事を。
こればかりは言える事ではなくて、つい漏らしてしまいそうになった口を手で塞いだ。
そんな分かりやすい行動をとっては、手を外されるのは目に見えていた。
頭を撫でた手が下りてきて手首を掴まれる。
「ハイ、話そうな。ちゃんと、聞いてやっから。」
「…何でもありません。」
「んなワケあるか。この期に及んでまだ隠し事すんのかよ。」
男の力には敵わなくて口元から手が離れた。
前からそうだけど、黒尾さんはこういう時に逃してはくれない。
いくら言わずに黙っていても、喋るまでぐいぐい来るんだ。
面倒臭い人だな。
まぁ、気になるような行動を取って聞いてくれるのを待ってる私も大概面倒な女だけど。
自分から話して否定されるのは嫌だから、無理に聞かれたから話した状態にしたいのだ。
多分、それを分かって黒尾さんもやってるんだろう。
わざとらしく、諦めたような息を吐いた。