第9章 再会
襖が開いて黒尾さんを先頭に皆が戻ってくる。
このタイミングの良さは、外で様子を伺っていた証拠だ。
木兎さんが静かに聞いていたのは意外だったけど、その謎はすぐに解けた。
赤葦さんに支えられたその人は完全に酔いが回って眠りはしていないけど、ぐったりとしている。
「おいおい、木兎は大丈夫か。うちで倒れて事件とか起こされたら困んだけど。」
「さっき、水は大量に飲ませましたけど、限界でしょうね。」
木葉さんと赤葦さんが話してて、月島さんは部屋に入って帰る準備を始めた。
「ほら、早く帰るよ。君が一番足遅いんだから。…足が短くて。」
「皆さんが長すぎるだけかと思いますよ。無駄に大きいですよね、身長は。」
月島さんの嫌味には嫌味で返して立ち上がる。
自分も鞄を持って部屋から出た。
「木葉さん、連絡しますね。…また。」
「おう、またな。」
店を出てから、木葉さんを振り返って手を振る。
笑いながら手を振り返してくれたのを確認してから皆の後を追った。
「そういえば、お会計は?」
「木葉にツケといた。」
「黒尾さん、そんな嘘吐いてどうするんですか。」
追い付いてから気になった事を聞いたけど、明確な答えにはなっていない。
お金の出所は翌日、判明した。
「俺の財布から金が消えてるんだけど!何?俺が寝てる間にスリとか…。」
「空の財布は返すなんて随分と律儀なスリもいるんですねぇ。」
「木兎の事だから酔って自分でバラまいたんじゃね?」
「…あの、それって。」
昨日の会計は全て木兎さんからでは、と言おうとしたら赤葦さんに口を手で塞がれる。
「あれだけ人を緊張させたんだから自業自得だよ、ね?」
内緒、と示すように唇に人差し指を立てて当て、小声で言う赤葦さんは悪い顔をしていた。